維新八策の評価(6)   

維新八策の5.社会保障制度改革

維新八策が掲げる「社会保障制度改革」は、どうやら、国に寄りかかって生きている弱者を自立させる、という理念のようだ。

掲げられている理念は、ここで一つ一つ挙げて指摘するまでもなく一般的で論述に値しない。

意味が分からないものもある↓
・負の所得税(努力に応じた所得)・ベーシックインカム(最低生活保障)的な考え方を導入=課税後所得の一定額を最低生活保障とみなす=この部分は新たな財源による給付ではない

基本方針は、国民を自立させることを前提にしながらも、国が国民の所得や資産の情報を把握しつつ、最低生活保障の水準を決めていく・・・、つまり、何が最低限の生活かはお上が決めるというわけか。

[年金]の項では年金の一元化と積み立て方式が挙げられている。積み立て方式に移行するなら年金の一元化は必要ない。全く別の問題が一緒に語られている。

年金の一元化は、一般的に賦課方式給付建ての限界を解消するために叫ばれている。
加入率の低い国民年金、景気の悪化や運用詐欺によって揺らいでいる厚生年金、安定していると目されている公務員などの共済年金。賦課方式ではその年の保険料の総体を給付対象者に分配する自転車操業なため、加入率や収入が悪化している年金は、安定している年金に「カネよこせ」となる。つまり、一元化せよとなる。

しかし、年金財源は純粋に保険料でまかなわれているわけではない。税金が投入されているのである。よって、一元化したところで税金の投入は続く。高齢化社会では給付を受ける人間のほうが多いため、その年の現役世代からの徴収だけでは支払いをまかなえないのである。

この問題をどうするか。

維新八策では、

・年金を一元化し積立方式の導入
・高齢になっても働いて所得を得、それまでの資産と併せて生活し自立する

としか書いてない。

現役世代にいくら貯金しても家の一軒も建てられない時代に、自分の老後のために年金掛金の積み立てとは・・・。老後の生活をまかなうためには、今いったいいくらの掛金を積み立てるというのか。非現実だ。だから死ぬまで働くというビジョンを抱き合わせている。すごい時代がきそうだ。

かくいう私も年金については積立方式論者だ。しかし、税の投入は避けられないと考えている。今の保険料のみを積み立てて運用したところで、いったいいくらの給付が受けられるかを想像してみればたやすい。

そして、こうある。
・国民総背番号制で所得・資産(フロー・ストック)を完全把握

まるで共産主義国のようだ。

維新八策の年金の考え方は、議論のテーブルに上がってくるレベルにない。これは理念であると逃げるなら、マニフェストが出たら改めて議論することとし、現段階では荒唐無稽と評価せざるを得ない。

続く[生活保護]の項

大阪市の行政の現場にいながら、この程度の認識とは思わなかった。

生活保護の問題は、週刊誌などでたたかれているようなレベルの問題ではない。

生活保護からなぜ抜け出せないのか。

「生活保護のカネをもらっているほうが、働くよりも楽だから」という週刊誌が取り上げるようなレベルの人間はこの場の議論の範囲外に置く。もってのほかだからだ。

ちゃんと働こうとしている人に何が起こっているか。それは、働いた分は国庫へ返納ということで全額召し上げられるのである。つまり、保護を抜けて再出発しようにも、保護打ち切りの瞬間から次の給与までの間、生活資金ゼロになってしまう。これでは、抜け出したくてもスベがないのだ。

維新八策には現場の視点がない。トップが市長であるのに、だ。

維新八策では、生活保護を現物支給に変えていくという。また、被保護者の医療費に自己負担を導入するという。

被保護者が病院にかかるとき、市役所の担当者の許可を必要であることをご存じだろうか。被保護者には保険証は発行されていない。したがって、市役所の担当者の許可をもらって保険証に代わるものをもらい受診する。

一部報道で「病院もタダ」みたいなことを言っていたが、一側面のみを伝えている。被保護者は、自分が、あるいは自分の子が診療を必要する事態に陥っても、いったん足踏みしてしまうという心理的圧迫を受けながら生活している。

「だったら働いて抜け出せばいいじゃないか」という意識は困ったことに市役所の担当者にも根強い。抜け出させるために弱者をいじめているような者もいる。

だから、問題を三つのブロックに分けて考える必要がある。無気力な被保護者をどうするかという問題、働く意思がある被保護者への就労支援の問題。そして高齢者や障害者といった収入の確保が困難な被保護者の問題。

維新八策はもう少し現場を見て立案すべきだろう。

[医療保険・介護保険」の項は、基本方針が次の4つしか掲げられておらず、議論がしづらい。

・医療保険の一元化
・公的保険の範囲を見直し混合診療を完全解禁
・高コスト体質、補助金依存体質の改善
・公的医療保険給付の重症患者への重点化(軽症患者の自己負担増)

かつての「公約」レベルなので、もっと具体化してほしい。この分野の専門家がいないとお見受けする。
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by cogno_eb2 | 2012-09-21 12:15 | 維新の会

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