年金制度を考える(5) ~一元化の是非~     

 さて、前回ではスウェーデン方式と、その名を語る民主党案を見てきた。

 総括すると民主党案は「賦課方式」「給付立て」の現行制度はそのままに、国民・厚生・共済と分かれている年金を一元化するところだけスウェーデン方式の概念に沿った形となっている。

 この「一元化」については、ここのところの年金未納問題の原因として「制度の複雑さ」があげられ、一元化に向けた協議を行うという三党合意が結ばれたところである。

 すなわち、現在参院にまわった法案が成立したあとに、一元化に向けて協議する余地を残したということである。

 「制度が複雑だから年金未納者がたくさんいる」→「制度を一元化すれば未納はなくなる」という安直な判断は危険だ。

 何が危険かというと、さきにあげた4つの視点のうちの2番目↓の問題だ。

2.正社員とパート、サラリーマンと自営業者、民間と公務員など、職業で異なる制度の不公平感

 民主党はこれらの不公平是正のために一元化するというのが基本的な姿勢だ。しかし、民主党案では「賦課方式」「給付立て」の現行方式に基づいて一元化した場合の想定を、具体的な数字を出して示していない。不足する財源を補うために消費税をUPするということだが、年金受給者からも間接税として徴収することが、本当に平等をもたらすかについては疑問がある。

もう一度この図を良く見て欲しい。



 基礎年金部分についてはすでに一元化が実施されている。これは、改正前の国民年金の年金財源がピンチになり、徴収漏れがないであろう公務員の共済年金や、好景気を受けて基盤が安定している厚生年金などから資金を調達して国民年金の給付に当てたかっこうだ。

 このときから国民年金の徴収率アップの対策をとらなければならなかったのだ。しかしながら、他の財源と統合するということでその場を乗り切った。今回、さらに基礎年金部分の上に乗っかる、いわゆる二階建ての部分を含めて完全一元化しても、国民年金の徴収ができていない事情が改善されなければ、厚生年金や共済年金を払っている人たちからすれば、不公平感がでるだろう。

 少なくとも私は反対だ。国民年金の徴収率を上げ、財源をきっちり確保できる体制をとってから統合すべきだ。カネがないからあるところからまかなう、という場当たり的な改革は、改革とは呼べない。

 その意味で、「未納が出たのは制度が複雑だから。複雑な制度はすっきりと一つにまとめよう」などといった安直な発想の一元化は絶対に認めてはならない。抜本的改革とは呼べないのだ。

 この観点から、現行制度を維持した上で、将来の給付額を明示し、今後の保険料率を明らかにし、国民年金の徴収の問題にも改善の姿勢を示している、政府案について、いよいよ見ていくことにする。
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by cogno_eb2 | 2004-05-19 19:34 | 年金問題考

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