連立与党VS野党民主党 マニフェスト総括   

 政権選択のための選挙であれば、連立与党の自民・公明、最大野党の民主の3党のマニフェストを読むことが必要かと考え、その3つに目を通しました。その感想を書いておきます。

マニフェスト自体の特徴

●民主党

 一部マスコミで「数値目標が入っているから評価する」みたいなことが言われている。また、21世紀臨調では総じてそこそこ高い評価がなされている。しかし、私個人としては、マニフェストに載った項目のうち1/3ほどが抽象的で公約とは言えず、半数が実現年度を示していない、という内容であり、年限を切った公約は57項目(18.5%)なので、マスコミや21世紀臨調の評価は当たらないような気がしている。さらには、マニフェスト2003を白紙撤回した姿勢に疑問。

●自民党

 120の約束ということだが、ざっと数えた感じでは公約としては170項目ある。そのうち96項目(56.5%)が抽象的で、年限を切っている公約が32項目(18.8%)、やや詳しい公約が42項目(24.7%)であった。年限を切った分野は「1.改革」で17項目(年限を切ったうちの53.1%)ついで「2.国際競争力・成長」で11項目(同34.3%)で、9割近くを占める。「4.子育て・教育」は年限を切ったものはなく、この分野に言及した21項目は公約全体の12.3%であり、いかに力が入っていないかがわかる(ちなみに「5.外交」は最も少なく10.5%)。

 改革と国際競争力に主眼が置かれた、自民党らしいといえばらしい公約だ。民主党の年限を切った項目の上位2つは財政健全化と郵政民営化だったので、内容的には結構似通っている。

 あとは個々の政策において賛成する項目と反対する項目がどの程度の数になるかという比較と、族議員が改革を骨抜きにしやしないか、という懸念からの実現力の見定めか。

●公明党

 公明党のマニフェストはざっと数えて158項目。年次を切っているのは38項目で全体の24.0%。特徴は、子育てや医療、介護などの分野は全体の1/3におよぶ46項目あり、その中で実現年次を切っているものは22項目でこの分野での47.8%、年次を切っている件数全体の57.8%もしめる。かなりの力の入れようだ。中でも子育ての20項目は全て平成20年度までの目標を掲げている。

 我々に身近な暮らしに関する項目が多く、自民党が最も力を入れていない分野を補完するようにも見える。

 公明党は2003年の衆院選、2004年の参院選で示した公約は123項目であり、その進捗状況をHPで公開している。今回の158項目のマニフェストの実現可能性は、前回の公約の進捗状況を勘案して見定めるということになるだろう。


◆民主党マニフェストの感想(総括)

 マニフェスト作りは最大野党である民主党が最も有利である、という前提条件を忘れてはならない。それは、現政権への不満としてあがっていることを書き連ねればよいのであり、霞ヶ関の巨大な官僚集団との現実的な調整を度外視して、ある程度現実味を帯びた書き方をすればそれでよく、中身に対する批判については「野党は情報が少ないのだ」とかわすことができる。

 したがって、実現性のシビアな内部チェックを必ずしも伴わなくてもよい、という甘さが野党故に許されるという側面があることを念頭に、それを少し割り引いて評価する必要があるだろう。

 その前提で考えると、過去のエントリで分析したとおり、表現に曖昧な部分が多く、単独政権を目指すという割には分野による偏りがある。我々有権者が直面するような身近な政策についてはあまり詳しく書いてない。身近な政策の中で突出しているのは年金改革のみであるが、私は民主党の年金改革案に反対で、私の考えはすでに過去のエントリで示したとおりだ。

 さらに指摘しておかなければならないのは、野党故にある種の言いたい放題ができるわけだが、民主党が問題視する現在の我が国に対する課題が200もあるのに、今回マニフェストで示した取り組みを、これまでの政治活動で行動におこしていないことに不満と不安を感じる。野党の立場から国会への法案の提出はいくらでもできるだろうし、与党も納得するような立派な法案を作るか、もしくは国民も大いに支持をする対案を出して国民支持をとりつける、という行動が見られない。政争ばかり繰り広げている。前回のマニフェスト2003は、「政権がとれなかったのでチャラ」になったそうだが、選挙の時に有権者に問題点を指摘して「こんなんでいいんでしょうか!自民党ではなく、私たちにやらせてください!」と言ったのなら、政権はとれなくても指摘した問題点を解消させる活動をするのが議員だと思う。その意味で、これまでそれらのことを一切やってないのに、政権がとれたらいっきにこれもやる、あれもやる、というような、「うまい話」は無いように感じる。総合的にいえば、実現可能性を感じさせないマニフェストだ。
 
 加えて、マニフェスト概要版ともいえる「8つの約束」には、児童手当の財源として扶養控除などの各種控除をなくすことは書かれておらず、マイナス評価につながる部分はあえて概要版に載せなかったように感じる。姑息な手段はとってほしくない。

◆自民党政権公約の感想(総括)

 自民党は霞ヶ関の官僚集団が連綿とレールを引いている既定路線を公約として掲げ、実現できて当たり前の印象が強い。政権公約の作り方が政治主導になっておらず、各省庁が黙々と政策決定しているものをとりまとめた感がある。

 今回の選挙では郵政民営化を最大の争点にしているので、本来ならば政権公約には郵政民営化の一点のみが書いてあってもよかったかもしれない。郵政民営化は明らかに政治主導、というか小泉のこだわりであるからだ。

 郵政改革ができないようでは他の改革なんてできっこない、というのは妙な説得力があるが、次の改革は医療制度改革、社会保障制度改革など、どでかいものが控えている。特に、診療報酬制度の改革は我々市民にとっては透明化・合理化してほしい最たるものだ(と私は思う)が、いざこれに手をつけようとなると、郵政反対造反議員のように、医師会などからカネと票をもらっている族議員がまた反対・抵抗をするだろう。そうなったときにまた今回のような騒動が起きるのか。

 今回のマニフェストにも医療制度改革がうたわれているが、族議員たちの抵抗が容易に予想され、本当にできるのかどうか不安である。結局、大きな改革のたびに自民党をぶっ壊さなきゃならない騒ぎになるのなら、自民党はぶっこわれてしまって再編した方がいい。
 
 マニフェストの特徴は、私が個人的に関心のある、子育て支援や教育などの我々に身近な領域の言及が非常に曖昧で満足できない。

◆公明党マニフェストの感想(総括)

 個人的な現在の関心からすると、子育て支援が充実している公約を、実現年度を明示して示しているところに好感がもてる。ただ、実現方法が明記されていないことが気がかりだ。民主は各種控除の廃止を財源とすることを公表しているし、自民は、若手議員のワークショップでは子育て支援系の政策の財源を、民主と同じ控除の廃止としている(TV報道による)ことから、この時点で自民・民主への期待は無い。子どもが産まれるまでは確実に増税だしね。問題は公明党が考える財源だが、小学6年生までの財源については見込みがあるが中学生までとなると見通しがたたず、二段階での実現、と新聞にあったので、今後の情報に期待しよう。
 
 前回のマニフェストの進捗状況のページもわかりやすかったので好印象である。マニフェストを掲げて与党にいるという立場からすれば、検証をすることは必要なので、その情報が用意されていることは重要なポイントだ。

 ちなみに自民党にも進捗を示すデータがあるが、まるで官僚が作ったようなもので、あまり印象がよくないのが事実だ。


▼最後に
 私はただのサラリーマンで一有権者でしかないから、シンクタンクが実施するような評価はできないし、するつもりもない。自分の生活上の関心にちょっと引っ張られすぎかな?と自省しつつも、民主党政権ではなく現政権の維持を選択したい気持ちに傾いている。民主党は野党であっても掲げた200項目の実現に向けて努力する姿勢を確認し、見極めてからでも遅くはないかと。あとは自民に入れるか公明に入れるかだが、自民の族議員の存在には辟易しているので、小泉の意気は買うが、自民党の体質そのものにはちょっと抵抗がある。

 まだ時間があるのでゆっくり考えようと思う。
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by cogno_eb2 | 2005-08-29 17:55 | ニュースコラム

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