民主党マニフェスト:年金改革にもの申す(2)   

民主党の年金新制度案については、民主党HPでも制度概要については掲載されていませんが、言論NPO 自民党×民主党 政策公開討論会 における枝野議員の発言をもとに考えます。

枝野発言による民主党の年金制度案(議事録からピックアップし、当ブログで取りまとめたもの)

1.高齢者よりも若者が多いことを前提に、世代間の扶養という発想で組み立てられた現在の社会保障制度は、いくら手直しをしても安定しない。世代間扶養という枠組みを取り払う必要がある。

2.世代間ではなく、全世代で賄う。支払い能力のある人が所得の少ない人に対して所得移転を行うという考え方。つまり、税方式を導入し、保険方式と税方式で組み立てる。

3.保険方式は所得比例年金、税方式は最低保障年金。

4.保険方式は、「見なし掛金」制で、現役世代に払った額と、平均寿命までにもらえる額を一致させる。

5.現行方式のから新方式への完全なる転換のための所要期間は40年。(現行制度に新たに加入になる対象者は新方式へ移行し、40年後には現行制度利用者はいなくなる)

6.新制度導入時に、現行制度における債務を切り離すが、現行制度で、法律で支給額を定めたものは支払わざるを得ないため、支給が開始されている人への支給は、過去に支払った分に対応する額の支給は行う。

7.新制度と現行制度は分離するため、現行制度で定められた支給額を寿命まで支給し続けることは、そのまま債務となる。この債務は積立金の取り崩し等で対応する。

8.新制度加入者は「見なし掛金」制なので、赤字は生じない。加えて、新制度加入者の支給は40年後のため、消費税の引き上げは不要。

9.新制度の給付水準は、現役時代の平均所得の30%。所得が少なく年金が少ない人には、現在の価値でいうと税方式で約7万円くらいを最低保障年金として給付する。

10.新制度は完全積立方式ではなく「見なし掛金」制であり、現在の基礎年金の国庫負担分を過去債務に回す。


 ちょっと専門的な議論になっていくので、分からない言葉は高山オンライン 年金用語解説を参照してください。

1について
 過去当ブログでも11回にわたって検討してきたとおり、少子高齢化が一層進行する今日にあって、世代間扶養の撤廃は最重要課題であり、この認識は私と一致している。

2について
 所得移転という考え方が妥当かどうかは分からないが、「賦課方式・給付建て(現行世代間扶養の方式)」を廃し、「積立方式・拠出建て(掛金建て)」を導入するとなると、月々の掛金の積立金を運用するのみで老後の生活資金は用意できない。したがって積立方式といえども、国が設定する最低保障額を満たすまでの差分を税で賄うことは必要となる。よって、結果としてこの認識も一致している。

3について
 名称については特に異論はない。

4について
 平均寿命までの受給額との一致は、平均寿命以前に亡くなった方の「見なし積立金」の残額を、平均寿命以上に生きている人の長寿によるリスクに移転することを意味しており、リンク先の記事中でそのように発言している。私は「見なし掛金」ではなく個人勘定の導入を主張しているため、死亡時に残額を戻して精算すべきと考える。よってこの認識は一致しない。

5~8について
 この点については制度設計が明確でなく、疑問が残る。それは、発言からすれば、新制度のスタートが22年4月と仮定して、スタート時から新制度に加入する人以外は、ずっと現行制度でいくことを差しているのか不明。例えば、10代で社会に出た若者が、新制度スタート時点で1年ほどの年金保険料を払っている場合、現行制度を脱退して新制度へ加入するほうが有利だと判断された場合でも、現行制度に入り続けなければならないのか。脱退権はないのか。

 枝野氏の発言の中に、既に法定支給額を受給しているひとの分は減らせないという趣旨の発言があるが、これはおそらく高度成長期に、「少ない掛金で大きな安心的」な受給率を約束され、給付が始まっているような人を指し、いまさら「あなたは実際には掛金が少なかったから減らします」とは言えないという趣旨だろうが、給付が始まっていない現役世代の処遇はどういうプランにあるのか。若い人ほど脱退による捨て金は少なく済み、新制度に入り直せば現行制度以上の益があるとすれば、間違いなく脱退するだろう。

 一方で、発言からすれば新制度加入は新しく対象者となる新社会人をイメージしているようなので、それからすると、受給者ではない現行制度加入者(いわゆる現役世代)は移行しないものという制度設計と思われる。

 その場合、現役世代の給付水準は「5年ごとの見直し」「マクロ経済スライド」制度の現行法のシステムで進むのか。あるいは、過去債務の確定・切り離しというのは現行法の水準で凍結するという意味なのか。それとも、新制度スタート時に65歳以上の受給者への給付を確定し(債務の確定)、その時点での積立金で、確定された受給者への給付を続けていくのか。

 その場合、64歳の人の新制度積立額はわずか1年分となるが・・・(ただ、8の発言からすると、赤字を生じないのは新制度加入者のみ、なので、現役世代は現行制度が続くと思われる)。

 ということで、5~8については、制度設計が不明なため判断できない。

9について
 これは単純に現在7万円としている、その時々の貨幣価値に換算した額に達しない者には、その差分を税で給付するということなのか?7万を超える人は保険方式の見なし運用金のみで、ということでよいか。本人も述べているとおり、水準は政治決定であろうから、そのような設計となるだろう。

10について
 完全積立ではなく見なし積立だから、保険料のすべてを運用に回すということではないそうだが、私は個人勘定を主張しているので、新制度の受給者の運用益を最大化が求められることから、過去債務に回す制度には賛成しかねる。

次回は私なりの案を示し、民主党の新制度案を評価したい。

民主党マニフェスト:年金改革にもの申す(3)につづく

高速道路無料化にもの申す
自動車関連暫定税率の廃止にもの申す
年金改革にもの申す(1)
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by cogno_eb2 | 2009-07-31 20:07 | 年金問題考

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