認識→評価 客観と主観の構造(4)   

 我々の生活世界は、単に個人主観的世界の乱立、または、個人主観的世界の無関連な並列ではなく、絶えず他の個人主観との相互連関の中で、「言葉によって対象化され、言葉の意味によって客観化」された“理解可能な知識層”を共有して成立している。そして、その“理解可能な知識層”は,引用にあるとおり「人間の自発的創造性による外化」が「一種の螺旋型的進化をとげていく」というメカニズムにあり、まさに、価値創造原理の一端を示しているものと解釈できる。

 人はこの世に生を受けて後、その所属する社会に既に存在している常識や価値理念(“理解可能な知識層”)を、実証主義がいうように、まさに“外在的”に認識し、自身の常識や価値理念を形成していく。

 人は、社会化の課程において、自らの経験を通して認識を深め、そして領域を広げ、自身の常識や価値理念を形成していく。社会生活における新しい発見やそれまでに培ってきた価値理念に変更を迫られるような経験は、下田のいう「螺旋型的」に進化していく。

 「人」はマスコミの報道やインターネットでの話題、所属する集団での関心などから得た間接的な知識をもとに様々に問題関心を生じさせる。あるいは自身の生活上の直接的な出来事をもとにした問題解決型の関心などもあろう。

 我々はそれらの問題関心を設定する際、ある程度の漠然とした予備知識をもっている。問題関心をもった主体者の「主観的な“直観”」をベースにして、主体者は自身が既に持ちえている情報をもとに、「主観的な“評価”」を一端は下している。

 たとえば、政府が増税を検討しているというニュースが流れたとき、まず自身の生活が苦しくなることを理由に増税は反対という立場を示し、なぜ増税を検討しているのかという詳細な情報を検索する前に、政府がまず財政建て直しの努力をせずに国民に増税を求めることは順序が異なる、といった、自身のその時点で持ち得ている価値理念に立脚して、「主観的な“評価”」の根拠を並べることができている。

 下田は次の「2.前科学的理解の段階」において、研究者は、自身が前科学的直観の段階で形成した問題意識に関連する社会的現実の探求をはじめる、としている。

 この段階で探求するものは、「人々が常識的意味において客観化した日常言語的に表現している諸概念」であり、科学者自身の言葉による概念ではない、としている。

認識→評価 客観と主観の構造(5)へ続く
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by cogno_eb2 | 2009-08-25 00:18 | 社会学的考察

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