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年金制度を考える(11)   

 ミズタマノチチさんが、公開討論会の模様を報告してくれている。↓

公開討論会行ってきました(自民の人も納得いかぬのか)

 自民にも民主にも、改正年金法による現行制度については早期に作り変えなくてはならないという認識をもっている議員がいるということが分かった。

 政争の具にする必要はなくなったので、本腰入れて検討してもらいたいものだ。

 「賦課制から積み立て制へ、財源は税金で、2階建て」という認識では、自民・民主の両議員とも同じ認識にあるようだ。

 ただ、三菱総研のレポートにもあるとおり、賦課方式と積立方式はそれほど違わない、という指摘もあるので、単なる方式論争ではなく、個人勘定を導入した拠出建てにするのかどうかも議論していただきたい。

 個人勘定を導入した確定拠出型でないと、カネの流れ自体はあまりかわらなくなってしまう。賦課方式に代表される、世代間扶養の考え方を捨てられるかどうかがポイントだ。
 
 まず、賦課方式に代表される、世代間扶養のカネの流れを見てみよう。

 

 左が現役バリバリの働き手で、右が年金受給者である。高齢化社会が進むと年金受給者を支える現役の人数がどんどん減って、2.5人で1人とか怖い数字がでているが、ここでは単純化して1:1の絵を書いた。

 年金受給者が受け取る年金額は、その受給者が現役時代に保険料を納めて資格を得た金額だ。高度成長期やバブル期などを経験してきた高齢者の中には、少ない保険料で莫大な年金の受給権を手にした人もいるだろう。彼らの受給金額は確定しているので、少子化が進む日本においては、現役が支払った保険料では高齢者の年金額を満たさない。

 よって過去に余剰が出たときに積み立てておいた基金から取り崩したカネと、国庫からあてられるカネが補填されて、ようやく年金受給者は年金を手にすることができる。
 
 このあたりの実際の数値を見ておこう。

 

 過去に年金額が確定した分で、支払いに足りない分は、実に450兆にもおよぶ。450兆円もの債務超過を起こしているのだ。

 さて、この危機的な状況を改善するために、スウェーデン方式が引き合いに出されるが、では、スウェーデン方式のカネの流れはどうなっているのか。

 

 スウェーデン方式では、保険料の支払いは賦課方式で、給付は拠出立てとなっている。つまり、現役が納めた保険料は、そのまま年金受給者の支払いに当てられるが、保険料を納付した履歴を記録し、納めた額に名目上の運用利回りを記録し、将来受給できる仕組みだ。

 保険料を納付している側は自分が納めた保険料が月々積み立てられていって、運用利回りで増えていくように見えるが、実際は帳簿上の話で、カネは受給者への支払いに使われる。ちなみに、保険料のうちわずか2.5%は、納めた個人が市場で運用するプレミアム年金という制度がある。

 自民・民主ともに賦課方式を積立方式にするという話だが、このあたりのカネの流れがいまいちはっきりしない。過去に確定した450兆円の年金支払債務をどうするか。これが残る以上は、積立方式にしたところで、積み立てて運用して増やすためのカネがどこにもないのだ。スウェーデンのように賦課方式・拠出建てに変更しようとしても、個人の保険料納付分を計算して、個人単位の帳簿をつけるところまではすぐにでもできるだろうが、名目運用利回りで増えた分は、実際には増えていないのだから、結局税金か現役世代の保険料でまかなうことになるのだ。

 450兆円の手立てはどうするのか。単に積立方式に移行しても、そのメリットを引き出すためには、過去に確定した、保険料納付に比して格段に高い受給額を調整しなくては450兆は消えない。つまり、確定した高い受給額を低く抑えること以外に無い。これでは暴動がおきそうだ・・。

 そこで私は「積立方式拠出建て」を提案するのだが、これは前にも説明したように個人勘定を導入した確定拠出型だ。これは新年金として現行制度と並行して存続させる。おそらく若い世代から45歳くらいまでの人は、こちらに移行することになるだろうが、45歳あたりから上の人に関しては、現行制度に保険料を払いつづけて権利を獲得したほうが得だろうから、それを認める。

 その場合のカネの流れはこうなる。

 

 現行制度を選択した者のカネは、今までどおり、そのまま受給者の年金支払いに当てられる。新制度に移行した者は、納付した保険料は個人勘定で管理され、自己責任で運用して将来自分に帰ってくる。

 新制度は世代間の扶養という概念にはないので、人口構成の影響を受けない。したがって、仮に少子化が見込みよりも進んだとしても、自分が納付したカネは年金支払いには使われずに現存するのだ。この新制度では、将来起こる年金給付のための赤字を出さないので、問題となるのは現行制度の赤字分のみになる。

 問題は確定した450兆円の年金債務と、現行制度を選択した世代の将来の債務であるが、これはやはり税金を投入せざるを得ないだろう。それがいくらになるのかはシミュレーションしてみないと分からない。ただ、新制度の創設により、新制度からは将来の債務は出ないので、あとは確定した債務をなんとかするだけだ。

 もし税金だけでは厳しいという場合は、新制度を選択した者の保険料を100%プールするのではなく、スウェーデンのように数%は名目とすることで、新制度の保険料を財源とすることも可能であろう。つまり、新制度の保険料を100%運用にまわすこととすれば、現行制度の負債を確定させることができるし、100%のうち10%あるいは20%を現行制度の給付に当てるとすれば、そこで引いた分を将来補填する必要があるので、債務の解消は長期化することになる。そのパーセンテージの調整で、債務を解消する期間を調節することができる。

by cogno_eb2 | 2004-07-28 15:33 | 年金問題考

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